士業が補助金・融資を提案する意味
補助金は、締切が短く、要件も細かい制度です。顧問先の多くは「どんな制度があるか知らない」「自社が対象かわからない」まま、締切をのがしています。決算や給与の数字、設備投資や採用の予定を知っている士業がひと声かけるだけで、顧問先の選択肢は大きく広がります。
ただし、提案から申請までの間には、資格によってできることと、できないことがあります。まちがえると、士業本人だけでなく顧問先にも不利益が出ます。まず線引きを確かめましょう。
資格ごとの業務の範囲
| 資格 | 法律で決められた業務 | 補助金・助成金での主なかかわり |
|---|---|---|
| 行政書士 | 官公署に出す書類などの作成、その提出手続きの代理など(行政書士法1条の3・1条の4) | 補助金の申請書類の作成・提出の代理(公募要領の決まりの範囲で) |
| 社会保険労務士 | 労働・社会保険の法令にもとづく申請書などの作成、提出の代行、事務の代理など(社労士法2条) | 雇用関係の助成金(労働局・ハローワークに出すもの)の申請 |
| 税理士 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談(税理士法2条) | 補助金をもらったあとの会計・税務(圧縮記帳など)、決算書の準備 |
| 中小企業診断士 | 独占業務はない(経営の診断・助言を行う国の登録資格) | 計画づくりの助言・確認。行政書士の資格がなければ、報酬を得て官公署への書類を作ることはできない |
行政書士でも、ほかの法律で制限されている書類は作れません(行政書士法1条の3第2項)。そのため、雇用関係の助成金の申請書類は、社労士の業務です。逆に、補助金(経済産業省・中小企業庁の補助金など)の申請書類は、一般に官公署に出す書類として行政書士の業務とされます。行政書士の資格のない社労士が報酬を得て作ると、行政書士法19条にふれるおそれがあります。
特に注意したい法律の線引き
1. 行政書士法19条(2026年1月1日の改正)
改正後の行政書士法19条は、「行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない」としています。総務省は、「手数料」や「コンサルタント料」などの名目でも、対価を受けて業として行うことはできないと説明しています。違反には罰則があり、法人にも罰金が科されます(総務省「行政書士制度」)。
つまり、税理士・診断士・コンサルタントなどが、「サポート料」「コンサル料」の名目で、顧問先の補助金の申請書類を代わりに作るのは、この制限にふれるおそれがあります。助言や確認にとどめるか、行政書士と組んで役割を分けます。
2. 雇用関係の助成金は社労士だけ(社労士法27条)
社会保険労務士法27条は、社労士または社労士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、労働・社会保険の申請書などの作成や提出の代行などを業として行ってはならない、としています。雇用関係の助成金を、報酬を得て社労士以外(弁護士など法律に別の定めがある場合をのぞく)が代わりに作ったり出したりすることはできません。労働局も、社労士・弁護士以外の提出代行者が報酬を得て手続きを行うことは法違反となる場合があると注意しています。
また、厚生労働省は、助成金の不正受給に社労士や代理人が関与した場合、事業主と連帯して返還する義務を負い、5年間は雇用関係助成金の申請が受理されず、氏名などが公表されると案内しています。顧問先の書類が事実どおりか、受け取るときに確かめることが大切です。
3. 税務は税理士だけ(税理士法52条)
税理士法52条は、税理士または税理士法人でない者は、税理士業務を行ってはならないとしています。こちらは「報酬を得て」という条件がありません。補助金の圧縮記帳や、どの期の収益にするかといった具体的な税務の判断は、税理士に任せます。
4. 公募要領の「申請者自身が作成」
資格があっても、補助金ごとの決まりが優先する場面があります。たとえば新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)の公募要領は、外部の支援者の助言は差し支えないが、事業計画は必ず申請者自身で作成し、作成自体を申請者以外が行うことは認めないとしています。同じ公募要領は、この補助金の電子申請システムでは代理申請のための委任関係を扱っていないとしています。
- 支援者がいる場合は、支援者の名前・支援の内容・報酬(予定)額・契約期間を申請の画面に書きます。書かないと、不採択や交付決定の取消になります。
- 持続化補助金(第20回)でも、商工会・商工会議所以外の第三者の支援を受けたのに、その相手と金額(着手金・成功報酬など名目を問わず)を書かないと、虚偽の報告として不採択・交付決定の取消になります。
- GビズIDのIDとパスワードを、支援者が預かってはいけません(利用規約に反するとされています)。
公募要領には、サービスの内容とかけはなれた高額な成功報酬や、経費の水増しの提案は不適切な行為の例とされ、認定支援機関なら認定の取消に至る可能性があると書かれています。また、採択を保証したり、採択率の高さで結果を約束したりする言い方はさけましょう。
5. 融資の紹介と手数料
融資の提案で、金融機関と顧問先の間に入って手数料を受け取る形は注意が必要です。貸金業法2条では、「金銭の貸借の媒介」を業として行うことも「貸金業」にふくまれます。士業の役割は、資金計画や計画書の数字の確かめ、金融機関への説明の準備などにとどめ、審査に通ることを約束しないようにします。
顧問先への提案の流れ
- 顧問先の情報をそろえる:業種、従業員数、所在地、資本金、直近の決算、設備投資や採用・賃上げの予定。
- 合う制度をさがす:国・都道府県・市区町村の補助金、雇用関係の助成金、融資の制度を、目的から当たる。
- 要件と締切を確かめる:公募要領で、対象・経費・賃上げなどの要件と、締切、必要な書類を確かめる。
- 役割を決める:だれが計画を書くか(原則は顧問先自身)、だれが申請書類を作るか(行政書士・社労士)、税務はだれが見るか(税理士)を決め、報酬と支援者の申告のしかたを顧問先と書面で決める。
- 書類と計画を準備する:GビズIDプライム、決算書、見積書などをそろえ、顧問先と計画を練る。
- 申請後・採択後も伴走する:交付申請、交付決定前に発注しないことの確認、実績報告、事業化状況の報告、税務の処理まで、予定を共有する。
設備投資と賃上げを一緒に行う顧問先の場合の、役割分担の例です。
| やること | 主に担う人 |
|---|---|
| 事業計画を書く(補助金) | 顧問先(外部の助言は可。公募要領の決まりに従う) |
| 補助金の申請書類の作成・提出の代理 | 行政書士(公募要領で認められている範囲で) |
| 雇用関係の助成金の計画・申請 | 社労士 |
| 決算書・賃金台帳などの数字の準備 | 顧問先・税理士・社労士 |
| 補助金をもらったあとの税務(圧縮記帳など) | 税理士 |
| 資金繰り・融資の準備 | 顧問先(金融機関とのやりとり)。士業は数字の確かめで支える |
提案しやすいタイミング
- 決算が終わったとき:数字が固まり、次の期の投資の話がしやすい。補助金の多くは直近の決算書を求めます。
- 設備の見積もりを取ったとき:多くの補助金では、交付決定の前に発注・契約した経費は対象になりません。発注の前に声をかけることが大切です。
- 賃上げや採用を考えているとき:賃上げを要件・加点にする補助金や、雇用関係の助成金が使えることがあります。
- 新しい公募が始まったとき:公募要領が出てから締切までの期間は限られています。GビズIDプライムや支援機関の確認書など、日数のかかる準備を先に始めます。
補助金の全体像は補助金・助成金のちがいと探し方、もらったあとの税務の基本は補助金をもらったときの税金と会計にまとめています。顧問先への説明にお使いください。
ホジョナビの士業向けの使い方
ホジョナビは、士業の事務所が、資格の範囲で顧問先の補助金・融資の準備を効率よく進めるための道具です。行政書士・社労士の事務所だけでなく、税理士・中小企業診断士の事務所も「士業の事務所」として使えます。ホジョナビが申請書を代わりに作ったり、申請を代行したりするものではありません。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 顧問先の登録 | 顧問先は何社でも登録でき、顧問先ごとに合う補助金・融資を一覧にできる |
| 要点カード・対象かのチェック | 公募要領の要点と、顧問先が対象になりそうかを確かめる |
| 提案の記録 | 顧問先にどの制度を提案したかを記録する |
| 融資の準備 | 融資をさがす・つなぎ計算・そろえる書類の確かめ |
| 聞き取り式の下書き・出す前の見直し | 資格の範囲だけで使える(行政書士=補助金、社労士=労働局などの助成金)。資格は登録番号で確かめる。税理士・診断士だけの事務所には出ない |
| 書類の共有 | 顧問先の書類を、見られる人を決めて共有する |
税理士・中小企業診断士だけの事務所では、顧問先ごとの補助金・融資さがし、提案の記録、融資の準備(つなぎの計算・そろえる書類)が使えます。申請書類の作成は、提携の行政書士(補助金)・社労士(労働局などの助成金)に依頼する形になります。
料金は、どの士業の事務所も同じプランで、ライト(職員1人・同時に進める案件5件)が月9,800円(税抜)からです。30日間の無料お試し(AI下書きは、資格の範囲で3件まで)があります。成功報酬・紹介料はいただきません。
AI下書きを使う場合も、作成の責任は資格のある士業と申請する会社にあります。公募要領が「申請者自身による作成」を求める補助金では、その決まりに従ってください。
よくある質問
- 税理士が、顧問先の補助金の申請書を作ってもいいですか?
- 補助金の申請書類は、一般に官公署に出す書類として行政書士の業務にあたると考えられています。2026年1月の改正で、行政書士法19条は「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と定めたため、顧問料やコンサル料の名目でも、報酬を得て作るのは制限にふれるおそれがあります。税理士は、決算書の準備や数字の確かめ、税務の助言で支え、申請書類は顧問先自身か行政書士が作る形にしましょう。
- 行政書士が、雇用関係の助成金の申請書を作れますか?
- 作れません。雇用関係の助成金は労働・社会保険の法令にもとづく申請なので、社会保険労務士の業務です(社労士法2条・27条)。行政書士法1条の3第2項でも、ほかの法律で制限されている書類は作れないとされています。社労士と組んで進めてください。
- 行政書士なら、どの補助金でも事業計画書を代わりに作れますか?
- 補助金ごとの決まりを確かめてください。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)のように、事業計画は申請者自身で作成し、作成自体を申請者以外が行うことは認めないとする補助金もあります。その場合は、助言や確認の形でかかわり、支援者として申告します。
- 成功報酬で補助金の支援を受けてもいいですか?
- 成功報酬そのものは禁止されていませんが、公募要領では、サービスとかけはなれた高額な成功報酬は不適切な行為の例とされています。支援者の名前と報酬(着手金・成功報酬など)を申請の画面に書く決まりもあります。報酬は、内容と金額を事前に書面で決めましょう。
- 顧問先を金融機関に紹介して、紹介料を受け取ってもいいですか?
- 金銭の貸借の媒介を業として行うと、貸金業法の「貸金業」にあたるおそれがあります。紹介料を受け取る形にする場合は、事前に弁護士や財務局などで法律の扱いを確かめてください。審査に通ることを約束する言い方もさけましょう。
出典
内容は、次の公式の資料で確かめました(かっこの中は確かめた日)。
- e-Gov法令検索『行政書士法』第1条の3・第19条(2026年10月26日)
- 総務省『行政書士制度』(令和7年改正法・令和8年1月1日施行)(2026年10月26日)
- e-Gov法令検索『社会保険労務士法』第2条・第27条(2026年10月26日)
- e-Gov法令検索『税理士法』第2条・第52条(2026年10月26日)
- 東京労働局『雇用関係助成金を申請される事業主等の皆様へ』(2026年10月26日)
- 厚生労働省『「雇用関係助成金」を正しく申請していますか?』(2026年10月26日)
- 中小企業基盤整備機構『新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版』(2026年10月26日)
- 小規模事業者持続化補助金事務局『小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)』(2026年10月26日)
- e-Gov法令検索『貸金業法』第2条(2026年10月26日)
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