業務改善助成金とは
業務改善助成金は、最低賃金の引上げに向けて、中小企業の生産性向上を後おしする厚生労働省の助成金です。正式には「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金」といいます。
しくみは、次の2つをセットで行うことです。①事業場の中でいちばん低い時給(事業場内最低賃金)を、決められた額以上に引き上げる。②生産性を上げるための設備投資など(機械、POSレジ、業務システム、コンサルティングなど)を行う。②にかかった費用に助成率をかけた額と、上限額のうち、低いほうが助成されます。
この記事は、令和8年度(2026年度)の交付要綱・交付要領と、2026年9月版の申請マニュアルをもとにしています。年度が変わると、コース・上限・期間が変わります。申請の前に、厚生労働省の業務改善助成金のページで最新の資料を確かめてください。
対象は(どんな会社・事業場が使える)
- 中小企業事業者であること(下の表のどちらか一方を満たす。大企業に支配されている「みなし大企業」はのぞく)。
- 引き上げの対象は、雇い入れて6か月たった、雇用保険の被保険者の労働者。従業員がいない事業場は使えません。
- 交付要綱の表では、対象の事業場は、事業場内最低賃金が令和7年度の地域別最低賃金以上で、令和8年度の地域別最低賃金未満のところ、とされています。
- 申請の前6か月から、解雇・時給の引下げなどをしていないこと。労働保険料を滞納していないこと、など(不交付の要件があります)。
- 同じ事業場の申請は、1年度に1回まで。過去に受け取った事業場も、また申請できます。
| 業種 | 資本金・出資の総額 | 常時使用する労働者数(企業全体) |
|---|---|---|
| 一般(下記以外) | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
いくらもらえる(3つのコースと上限額)
令和8年度は、事業場内最低賃金をいくら上げるかで、50円・70円・90円の3つのコースがあります。上限額は、コースと、引き上げる労働者の人数で決まります。事業場の規模が30人未満の会社は、一部の区分で上限が高くなります。
| 引き上げる人数 | 50円コース | 70円コース | 90円コース |
|---|---|---|---|
| 1人 | 30万円(40万円) | 40万円(50万円) | 90万円(100万円) |
| 2〜3人 | 40万円(70万円) | 50万円(100万円) | 150万円(240万円) |
| 4〜5人 | 70万円 | 130万円 | 270万円 |
| 6〜7人 | 90万円 | 180万円 | 360万円 |
| 8人以上 | 110万円 | 230万円 | 450万円 |
| 10人以上(特例事業者だけ) | 130万円 | 300万円 | 600万円 |
| 事業場内最低賃金 | 助成率 |
|---|---|
| 1,050円未満 | 4/5 |
| 1,050円以上 | 3/4 |
たとえば、事業場規模30人未満の会社が70円コースで2人の時給を上げ、120万円の機械を入れたとします。事業場内最低賃金が1,050円以上なら、120万円×3/4=90万円と、上限の100万円をくらべて、低いほうの90万円が助成の目安です(実際の額は審査・実績で決まります)。
- 設備投資などの費用(助成対象経費)は、10万円以上が必要です。
- 同じ事業主が複数の事業場で申請するときは、1年度に600万円までです。
- 消費税は、原則として助成対象経費からのぞいて計算します(免税事業者などには例外があります。くわしくは税理士に)。
特例事業者(上限の区分と、対象経費が広がる)
次のどちらかに当てはまる「特例事業者」は、上の表の「10人以上」の上限を使えます。
- 賃金要件:事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場。
- 物価高騰等要件:原材料費の高騰など外の要因で、直近6か月の平均の売上高総利益率か売上高営業利益率が、前年の同じ時期より3%ポイント以上下がっている事業者(人件費・役員報酬の変更は外の要因に入りません)。
物価高騰等要件に当てはまる場合だけ、パソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末と周辺機器(新しく買うものに限る)も助成の対象にできます。申出書と、その証拠の書類が要ります。
対象になる経費・ならない経費
| 対象になる例 | 対象にならない例 |
|---|---|
| POSレジの導入で在庫管理の時間を減らす | LED電球への交換など、単なる経費の削減 |
| リフト付きの特種車両で送迎の時間を減らす | エアコンの設置・内装工事・机やいすの増設など、快適にするための職場環境の改善 |
| 顧客・在庫・帳票の管理システムを入れる | 事務所の家賃・光熱費・消耗品・通信費など、ふだんの事業の経費 |
| 国家資格者による経営コンサルティング(業務の流れの見直し) | 広告・販促(パンフレット、動画、展示会、ランディングページなど) |
| 生産性を上げる機械装置の購入 | 建物・ビニールハウス・コンテナ、太陽光発電、一般の自動車 |
経費の区分は、謝金、旅費、借損料、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、経営コンサルティング経費、委託費です。交付決定の前に発注・購入したものは、どんな理由でも対象になりません。
締切はいつ(令和8年度・都道府県ごと)
受付は2026年9月1日から始まりました。締切は「その都道府県の令和8年度の地域別最低賃金が発効する日の前日」と「2026年11月30日」の、どちらか早い日です。また、時給の引き上げも、申請したあと、この発効日の前日までに行う必要があります。
| 県 | 新しい地域別最低賃金 | 発効日 | 申請の締切 |
|---|---|---|---|
| 青森・高知 | 青森1,090円・高知1,086円 | 2026年10月29日 | 10月28日 |
| 山形 | 1,092円 | 2026年10月30日 | 10月29日 |
| 山梨・徳島・愛媛・大分 | 1,093〜1,113円 | 2026年11月1日 | 10月31日(土) |
| 長崎 | 1,087円 | 2026年11月2日 | 11月1日(日) |
| 佐賀 | 1,095円 | 2026年11月15日 | 11月14日(土) |
| 京都 | 1,180円 | 2026年11月16日 | 11月15日(日) |
| 岩手・熊本 | 1,090円・1,092円 | 2026年12月1日 | 11月30日 |
| 沖縄 | 1,086円 | 2026年12月2日 | 11月30日 |
上の13県のほかの都道府県は、令和8年度の受付がすでに終わっています(新しい最低賃金が、10月25日までに発効したため)。また、締切の日が土日・祝日のときは、郵送・持ちこみは前の開庁日までに労働局へ届く必要があります(郵送は消印ではなく到着日)。Jグランツの電子申請は、締切の日までに申請が終わっていればよい、とされています。予算がなくなると、期間の中でも受付を終えることがあります。
申請の流れ
- 賃金台帳で、いまの事業場内最低賃金と、引き上げる人数を確かめる。
- 入れたい設備などの見積書を2社以上から取る。
- 賃金引上計画と業務改善計画を書いた交付申請書(様式第1号)を、事業場のある都道府県労働局(雇用環境・均等部・室)に出す(持ちこみ・郵送・Jグランツ)。
- 申請のあと、地域別最低賃金の発効日の前日までに、事業場内最低賃金を引き上げ、就業規則などに書く(1回で上げる。何回かに分けるのは不可)。
- 労働局の審査を経て、交付決定を受ける。
- 交付決定のあとに、設備投資などを行い、支払う(原則として、交付決定の年度の1月31日まで)。
- 事業実績報告書・支給申請書を出し、額が確定してから助成金が振り込まれる。
- 賃金を上げてから6か月たったころに、状況報告を出す。
必要な書類
- 交付申請書(様式第1号)と、賃金引上計画・業務改善計画
- 見積書(原則2社以上)
- 申請前6か月分の賃金台帳(労働基準法で決められた項目がそろったもの)
- 特例事業者として申請するときは、それを確かめる書類(物価高騰等要件なら申出書と証拠の書類)
- そのほか、労働局から求められた書類
厚生労働省のページに、申請書の記入例、Q&A、申請書を作る簡単なツール(Excel)があります。書類に足りないものがあると、申請の方法にかかわらず書類一式が返されます。締切の前は混むので、早めに出しましょう。
よくある失敗と、気をつけること
- 申請の前に時給を上げてしまう。申請より前、または地域別最低賃金の発効日以後の引き上げは認められません。
- 交付決定の前に設備を発注・購入してしまう。対象外になります。
- 自分の都道府県の締切を見落とす。締切は全国で同じではありません。
- クレジットカード・ローンの支払いが期限までに終わらない。1月31日(延長が認められたときはその日)までに口座から全額が引き落とされていないと、額が確定できません。
- 申請後に解雇や時給の引下げをする。引き上げた人だけでなく、その事業場の全員が対象として見られます。
- 30万円以上の設備を、承認なしに売ったり捨てたりする。財産処分には労働局長の承認が要ります。
業務改善助成金の申請を、申請する会社の代わりにできるのは、社会保険労務士(代行者)と弁護士(代理人)だけです(申請マニュアルより)。雇用関係の助成金の申請書を、報酬を受けて作ったり出したりするのは社労士の業務で、社労士(と弁護士)でない人が報酬を受けて行うことはできません。また厚生労働省は、厚生労働省の委託を受けたように装って申請を勧誘する事例があるとして、注意を呼びかけています。
ホジョナビは、申請の代行はしません。会社が自分で準備するために、使える助成金・補助金を探し、必要な書類を整理し、計画の下書きを考えるのを手伝う道具です。顧問先の申請を受けもつ社労士の事務所が、下準備に使うこともできます。
よくある質問
- 時給をすでに上げてしまいました。あとから申請できますか?
- できません。事業場内最低賃金の引き上げは、交付申請書を出したあと、地域別最低賃金の発効日の前日までに行う必要があります。申請より前の引き上げは認められません。
- パートやアルバイトも、引き上げの対象になりますか?
- 雇い入れて6か月たち、申請の日に雇用保険の被保険者である人なら対象です。雇用保険に入ってからの期間は、6か月なくてもかまいません。
- パソコンやタブレットは対象ですか?
- ふだんの事務機器は、原則として対象外です。物価高騰等要件に当てはまる特例事業者に限り、新しく買う端末と周辺機器を対象にできます。
- 自分の県の締切が過ぎてしまったら、どうなりますか?
- 令和8年度は申請できません。次の年度(令和9年度)の内容は、まだ公表されていません。令和8年度は、2026年4月22日に交付要綱が公表され、9月1日に受付が始まりました。次の年度の内容が出たら、最新の交付要綱で確かめてください。
- ほかの補助金と一緒に使えますか?
- 同じ経費について国や自治体から補助金などを受けていると、この助成金は受けられません。同じような理由で別の補助金を受けているときも、調整(併給調整)されることがあります。経費を分けられるかどうかは、申請先の労働局に相談してください。
出典
内容は、次の公式の資料で確かめました(かっこの中は確かめた日)。
- 厚生労働省『業務改善助成金』(2026年10月26日)
- 厚生労働省『業務改善助成金 交付要綱(令和8年度)』(2026年10月26日)
- 厚生労働省『業務改善助成金 交付要領(令和8年度)』(2026年10月26日)
- 厚生労働省『業務改善助成金 申請マニュアル(2026年9月)』(2026年10月26日)
- 厚生労働省『令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧』(2026年10月26日)
この記事は、ホジョナビの運営(株式会社ブレイクスルー)が、公式の資料をもとに作成しています(作り方は編集の方針)。ホジョナビは申請の代行や融資の紹介をしません。採択や融資の実行をお約束するものではありません。誤りに気づいたときは、hojonavi_support@breakthru.co.jpまでお知らせください。