事業承継・M&A補助金とは
事業承継・M&A補助金は、中小企業庁の「中小企業生産性革命推進事業」の1つです。会社や事業を次の経営者に引き継ぐときや、M&Aで会社・事業を譲り受ける・譲り渡すときにかかる費用の一部を補助します。以前は「事業承継・引継ぎ補助金」という名前でした。
申請は、国の電子申請の仕組み「Jグランツ」で行います。Jグランツを使うにはGビズIDプライムが要ります。公募要領では、発行まで1〜2週間、混むと3週間ほどかかるとされています。まだ持っていない会社は、先に取っておきましょう(GビズIDの取り方)。
この記事の数字は、16次公募(2026年9月公表の公募要領 Ver.1.0)のものです。公募の回が変わると、上限・補助率・条件が変わることがあります。申請の前に、必ず事業承継・M&A補助金の公式サイトの最新の公募要領で確かめてください。
4つの枠と、それぞれの対象は
16次公募には、目的のちがう4つの枠があります。まず、自社がどれに当てはまるかを考えます。
| 枠 | どんなときに使う | 主な対象経費 |
|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 親族・従業員への承継(同じ会社の中で代表者が交代する、個人事業を引き継ぐ)を5年以内に予定していて、後継者が設備投資などに取り組む | 設備費、外注費、委託費、専門家への謝金、旅費など |
| 専門家活用枠 | M&Aで会社・事業を譲り受ける(買い手)・譲り渡す(売り手)ときに、仲介・FA・デュー・ディリジェンスなどの専門家を使う | M&Aの仲介・FAの費用、デュー・ディリジェンスの費用など |
| PMI推進枠 | M&Aのあとの統合(PMI)を進める。専門家を使う類型と、統合のための設備投資などの類型がある | PMIの専門家への費用、統合のための設備費など |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 事業を廃業・廃止して、新しい挑戦に向かう。ほかの枠と一緒に申請(併用)することもできる | 廃業の登記の費用、在庫の廃棄、解体、原状回復など |
専門家活用枠の仲介・FAの費用は、国の「M&A支援機関登録制度」に登録された仲介業者・FAに払うものだけが対象です。契約の前に、相手が登録されているかを確かめてください。
いくらもらえる(補助上限と補助率)
補助金は「かかった費用 × 補助率」で、上限があります。16次公募の公募要領に書かれている上限と補助率は、次のとおりです。
| 枠・類型 | 補助率 | 補助上限 | 廃業費の上乗せ |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 小規模事業者等は2/3以内、それ以外は1/2以内 | 800万円(賃上げの条件を満たすと1,000万円) | +300万円 |
| 専門家活用枠(買い手支援類型) | 2/3以内 | 600万円(デュー・ディリジェンスを行うと+200万円) | +300万円 |
| 専門家活用枠(売り手支援類型) | 1/2以内(利益率の低下・赤字なら2/3以内) | 600万円(デュー・ディリジェンスを行うと+200万円) | +300万円 |
| 専門家活用枠(小規模売り手支援類型) | 2/3以内 | 450万円 | +150万円 |
| PMI推進枠(PMI専門家活用類型) | 1/2以内 | 150万円 | +300万円(単独申請のとき) |
| PMI推進枠(事業統合投資類型) | 小規模事業者等は2/3以内、それ以外は1/2以内 | 800万円(賃上げの条件を満たすと1,000万円) | +300万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 2/3以内(併用のときは、ほかの枠の補助率) | 300万円 | - |
- 補助の下限があります。事業承継促進枠・事業統合投資類型は100万円、専門家活用枠(買い手・売り手)・PMI専門家活用類型・廃業・再チャレンジ枠は50万円です。これより少ない申請は受け付けられません(小規模売り手支援類型は下限なし)。
- 上限が1,000万円になるときも、800万円を超える部分の補助率は1/2以内です。
- 賃上げの条件(基準年度の翌年度に、従業員1人あたりの給与支給総額を3%以上上げる)を表明して上限を上げたのに達成できないと、上げた分(最大200万円)の返還を求められます。
- M&Aが補助事業の期間内に成立(クロージング)しなかったときは、専門家活用枠の上限が下がります(買い手・売り手は300万円、小規模売り手は50万円)。
- 専門家活用枠には「100億企業特例」という別の類型もあります。くわしくは公式サイトの公募要領を見てください。
補助金は後払いです。採択・交付決定のあと、自社で先に費用を払い、事業が終わって実績報告をしてから入金されます。そのあいだの資金をどうするかを先に考えておきましょう(補助金のつなぎ融資)。
対象になる事業承継・ならない事業承継は
いちばん条件がこまかいのは事業承継促進枠です。16次公募では、主に次のような条件があります。
- 公募の締切日(2026年11月6日)から5年後の2031年11月5日までに、事業承継を終える予定であること。
- 後継者が決まっていること。法人なら、役員・従業員として3年以上の経験がある人、または代表の経験がない親族など。
- 経営権と所有権(株式など)の両方が、いまの経営者から後継者に移ること。
- 法人は3期分の決算・申告が終わっていること(個人事業主は、開業届と青色申告の承認申請を出してから5年たっていること)。
- 後継者が中心になって、生産性を上げる取り組み(5年で付加価値額などを年3%伸ばす計画)をすること。
- 認定経営革新等支援機関に、事業承継の見込みを確かめてもらった計画であること。
反対に、公募要領では次のような場合は「実質的な事業承継」とみなされず、原則として対象外です。
- 株式などの移転をともなわない、代表者の交代だけ
- グループの中での事業の組みかえ
- フランチャイズ契約や、のれん分け
- 休眠会社など、事業の実態がない会社の代表者交代
また、いまの経営者に払う譲受けの費用(土地や資産を買うお金など)は対象になりません。農業・林業・漁業そのもの(第一次産業)の事業も対象外です。
申請の流れ
- 公式サイトで、自社の枠の公募要領・必要書類のチェックリストを読む。
- GビズIDプライムを取る(1〜2週間、混むと3週間ほど)。
- 事業承継促進枠と廃業・再チャレンジ枠では、認定経営革新等支援機関に確認書を出してもらう。締切の直前だと間に合わないことがあるので、早めに頼む。
- 事業計画・見積りなどの書類をそろえ、Jグランツで申請する(16次の受付は2026年10月2日〜11月6日17時)。
- 採択・不採択の通知を受け取る。
- 採択されたら交付申請をして、交付決定を受ける。
- 交付決定のあとに、契約・発注・支払いをする(補助事業の期間は、2027年1月下旬から14か月以内の予定)。
- 事業が終わったら実績報告をし、確定した額が入金される。その後も、事業化の状況の報告が続く。
交付決定の前に契約・発注・支払いをした費用は、補助の対象になりません。専門家との委託契約も、交付決定のあとに結ぶ必要があります。
締切はいつ(2026年10月時点)
| 項目 | 日にち |
|---|---|
| 公募要領の公開 | 2026年9月4日(金) |
| 申請の受付 | 2026年10月2日(金)〜2026年11月6日(金)17:00(4つの枠とも同じ) |
| 補助事業の期間 | 2027年1月下旬(予定)から14か月以内 |
締切の時刻を過ぎた申請は受け付けられません。Jグランツは締切の直前に混むことがあるので、数日の余裕をもって出しましょう。17次公募の予定は、2026年10月26日の時点では公式サイトに出ていません。
必要な書類
枠や、法人か個人事業主かによって変わります。事業承継促進枠では、どの申請者も次の書類を出します(ひな形は公式サイトにあります)。
- 公募申請書(別紙)
- 認定経営革新等支援機関の確認書
- 事業承継計画表(事業承継計画書の骨子、補助事業の実施体制図など)
- 事業承継の実施についての誓約書
- 決算書・確定申告書、履歴事項全部証明書、後継者の住民票など(申請する人の形によって変わる)
公式サイトには、枠ごとの「必要書類チェックリスト」があります。書類の取り方は補助金の申請に必要な書類と取り方にまとめています。
よくある失敗と、気をつけること
- GビズIDプライムが締切に間に合わない。公募が始まってから取りはじめると、ぎりぎりになりがちです。
- 認定支援機関への依頼が遅い。確認書がないと申請できません。
- 交付決定の前に発注してしまう。その費用は対象外になります。
- 登録していない仲介業者・FAと契約する。専門家活用枠では、その費用が対象外になります。
- 賃上げを表明したのに達成できない。上げた上限の分を返すことになります。
- 事業承継が5年以内に終わらない。事業承継促進枠では、原則として補助金を返すことになります。
- ほかの国の補助金と、同じ中身で重ねて申請する。同じ経費に重ねて補助は受けられません。
申請書は、申請する会社が自分で中身を理解して出すものです。公募要領では、行政書士(行政書士法人)でない人が、報酬を受けて申請書を作ることは行政書士法違反になるおそれがあり、交付決定の取消しにもなりうる、とされています。外の手を借りるときは、だれが何をするのかを契約で確かめてください。また、実際の作業とかけはなれた高い成功報酬を求める業者に注意するよう、公募要領でも呼びかけています。
ホジョナビは、申請を代わりに行うサービスではありません。会社が自分で申請するために、合う補助金を探し、必要な書類をそろえ、申請書の下書きを考えるのを手伝う道具です。士業の事務所・支援機関は、顧問先・取引先の準備を手伝うときにも使えます。
よくある質問
- 事業承継・引継ぎ補助金と、事業承継・M&A補助金はちがう制度ですか?
- 同じ流れの制度で、名前が「事業承継・M&A補助金」に変わりました。公募要領には、過去に事業承継・引継ぎ補助金を受けた人は、事業化の状況の報告をきちんと出していることが条件、と書かれています。
- 親から子へ株を渡すだけでも対象になりますか?
- 事業承継促進枠は、事業承継をきっかけに後継者が行う設備投資などの取り組みを補助するものです。株を渡すことそのものの費用や、いまの経営者に払う譲受けの費用は対象になりません。また、株式などの移転をともなわない代表者の交代だけでは、対象外です。
- M&Aの仲介手数料は補助されますか?
- 専門家活用枠で対象になることがあります。ただし、国の「M&A支援機関登録制度」に登録された仲介業者・FAに払う費用だけです。契約は交付決定のあとに結ぶ必要があります。
- 次の公募(17次)はいつですか?
- 2026年10月26日の時点では、公式サイトに17次公募の予定は出ていません。公式サイトのお知らせを確かめてください。
- 申請書づくりを専門家に頼んでもいいですか?
- 公募要領では、報酬を受けて申請書を作れるのは行政書士(行政書士法人)とされています。その場合は、行政書士証票の写しと委任契約書の写しを出します。申請する会社が中身を理解したうえで、自分で申請することが前提です。
出典
内容は、次の公式の資料で確かめました(かっこの中は確かめた日)。
- 事業承継・M&A補助金 公式サイト(事務局)(2026年10月26日)
- 事業承継・M&A補助金『事業承継促進枠 公募要領(16次公募 Ver.1.0)』(2026年10月26日)
- 事業承継・M&A補助金『専門家活用枠 公募要領(16次公募)』(2026年10月26日)
- 事業承継・M&A補助金『専門家活用枠(小規模売り手支援類型)公募要領(16次公募)』(2026年10月26日)
- 事業承継・M&A補助金『PMI推進枠(PMI専門家活用類型)公募要領(16次公募)』(2026年10月26日)
- 事業承継・M&A補助金『PMI推進枠(事業統合投資類型)公募要領(16次公募)』(2026年10月26日)
- 事業承継・M&A補助金『廃業・再チャレンジ枠 公募要領(16次公募)』(2026年10月26日)
- ミラサポplus(中小企業庁)『中小企業庁担当者に聞く「事業承継・M&A補助金(令和6年度補正)」』(2026年10月26日)
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